現役料理長の筆者が学生時代を振り返り、経験談で詳しく解説させていただきます。
悩んでいる方は是非参考にしてください。
調理師専門学校は1年制、2年制、夜間(定時制)の3つのコースがある
学校によって調理師科、○○調理師科等、名前が変わりますが、通う年数で見てみてください。
厚生大臣が指定した調理師専門学校であればどのコースでも卒業すれば【調理師免許】は取得できます。
学校によって座学と調理実習の割合が違う
調理師専門学校では大まかに座学と調理実習、2つの授業で構成されます。
この割合が調理師専門学校ごとに違うのですが、大体は半分半分だったり、調理実習に力を入れているところは実習の時間が多く取られていたりします。
選ぶならば、各学校のホームページを確認しできるだけ実習の時間を多く取っている学校の方が良いと筆者は思います。
ただし、各学校によってさほど違いがない場合もあります。
それでは1年制、2年制、夜間(定時制)の特徴をそれぞれ見ていきましょう。
調理師専門学校の1年制(全日制)
和、洋、中、集団調理、全てのジャンルの調理実習をし、座学も最低限の必要知識を勉強しますので簡単に言うと【広く、浅く】学ぶといった表現でしょうか。
授業も毎日朝9時~17、18時頃まではありますので少し過密な時間割になります。
しっかりと学びたいといった方には時間が足らないことが多いです。
調理師専門学校の1年目は【調理師免許】に必要な必修科目を勉強するといった形になるので、勉強範囲は2年制でも夜間でもほとんど変わりありません。
どちらかというと【調理師免許】だけ早く取得し、すぐに働きたいといったような方が多く見られました。
年代は高校卒業の18歳~が多いです。
調理師専門学校の2年制(全日制)
2年制の1年目は1年制の授業内容とほぼ変わらないです。
和、洋、中、集団調理の実習と座学です。
1年制も2年制もマストでやることはほぼ同じです。
そして2年目以降はそれぞれの料理のジャンルにさらに特化し勉強します。
学校によって異なりますが、西洋料理、和食、中華、製菓パンコース等があります。
また必然的に2年目からそれぞれコースごとの調理実習時間が多くなっていくため座学よりも調理実習がメインの時間割になっていきます。
調理師専門学校によってはより実践的なレストラン実習を採用している学校もあります。
筆者は2年制の学校に通っていましたが周りの友達に聞いても2年制で良かったと言う人が多かったので、悩んでいる方は視野に入れてみてください。
有名校などは2年制を押しているところが多いので必然的に2年制の生徒が多くなります。
こちらも年齢は高校卒業の18歳~が多いです。
調理師専門学校の夜間(定時制)1.5年~
夜間(定時制)もあります。
1.5年~2年間の場所が多いようです。
こちらも1年制の授業内容を1.5年分にバラして組み立てているので勉強内容はさほど変わらないと思います。
昼間は働いていて夕方から通うスタイルなので20代~50代くらいまでの幅広い世代が通っています。
何か通う目的が明確でない限りは夜間で通う必要はないです。
学校でどういったことを求めていくのか、この部分は特に明確にし通うか判断しましょう。
具体的な授業内容について
時間割はクラスごとに決められている
時間割はクラス(各クラス30人程)ごとに決められており、大学のように自分で決められるような授業はありません。
卒業までクラスが変わることはないので、普通の学校生活のような感じだと思ってください。(クラス制は学校にもよります)
授業をサボる人も実際に多くいますが、デメリットの方が多くなるのでオススメしません。
1年目の座学
1年目は座学と調理実習の割合が5:5くらいのところが多いようです。
実際の1日の時間割として午前中(9時~13時)は調理実習、午後は座学、といったような構成になります。
その逆もあります。
座学は栄養学などの食材についての知識や食品衛生、調理に携わる上で必要な知識を学びます。
各教科ごとに先生がいます。
中間テスト、期末テストのようなテスト週間もあり点数によっては追試もあります。
座学に関してはあまり難しいことはないと思いますので、真面目に勉強すれば誰でもできると思います。
1年目の調理実習
調理実習は和食、洋食、中華、集団調理(給食等)をやります。
こちらもそれぞれ先生がいて、実際に現場で働いている非常勤の講師も多いです。
最初は包丁の持ち方や、包丁の研ぎ方から始めますので今まで料理したことないよって人も問題ありません。
むしろ生徒のほとんどは料理したことないという人が多かったです。
調理実習自体は4~5人程度の班で料理を作っていくことになります。(この人数は学校によって変わります)
そのため、全ての工程が1人1人できるわけではありません。
むしろ積極的にやらないと片付けや小さい作業のみで終わってしまうこともあるので、上手くコミュニケーションを取りながら進めていくか、お互い気を使いながら進めていくような形になります。
学生だと変に失敗を恐れてしまう節がありますが、最初からできる人の方が少ないので恥だと思わないように積極的に参加しましょう。
最初は先生の作り方(デモ)をメモをしながら見ていきます。
その後、各班に分かれて実際の作業に移ります。
教え方は先生によっても変わるのですが、最初は少し難しいと思うことが多いようです。
毎時間ごとに違うメニューをやるため、一回で作り方を覚えることは難しいでしょう。
ちなみに午前中が調理実習の場合は作ったものがお昼ご飯になるためお昼代は浮きます。
2年目の座学
2年目は調理実習をメインにしているところが多いので座学の時間は少ないです。
それでも飲食の経営学などちょっと踏み込んだ授業をやります。
西洋料理コースではフランス語の授業がありました。
現場でかなり多様するためこの授業は今でもかなり役立っています。
用語や調理器具の名前は現場に出る前に理解しておくととてもスムーズです。
2年目の授業内容については各学校によっても変わるところが多いので、2年制に興味のある方はこの2年目の授業がどういった感じなのか学校のホームページで調べてみましょう。
2年目の調理実習
2年目は調理実習がメインになっていきます。
和食なら和食のみの調理実習。
西洋料理なら西洋料理のみの調理実習といったように、入学時に決めたコースによって勉強してきます。
基本、他のジャンルの料理はやりません。
学校によっては学校内に生徒が運営するレストランを持っているところがあり、より実践的な授業も体験できます。
ちなみに学校内レストランがあるような学校は一般の方でも食べに行けると思うので気になる方は各学校のホームページを調べてみてください。
値段もかなり安く設定されています。
また実際の現場での研修も行います。
期間は学校によって様々ですが、2週間~1か月程度、実際の現場で働かせてもらいます。
時期も学校によって様々ですが、繁忙期が選ばれることはないので大丈夫です。
研修先は基本的にはホテルが多いですが、有名なマチバのレストランなどもあります。
ちなみに筆者のレストランでも学生の研修生を引き受けています。
研修先が気に入ってその企業を受ける人も多くいました。
2年目は自分が専攻したのコースのみを勉強しますので知識としてはしっかりと勉強すればついてくると思います。
夜間(定時制)の座学、調理実習
夜間も授業内容自体は全日の1年制と変わらないでしょう。
年齢層が幅広く、社会人が多いのでまた違ったカラーになります。
通う目的、何を学びたいか、何を得たいか、卒業後何がしたいのか、など自分の目的についてしっかりと明確にするようにしましょう。
学費、評判、身だしなみなどの細かい規定
学費、その他の費用について
安くて1年間で100万円~高くて200万円になります。
2年通えば倍の200万~400万にもなります。
また、入学時に学校指定の包丁セット一式とコックコート、帽子などを購入するため、別途数十万円かかる場合があります。
決して安い金額ではありません。
特待生制度で学費免除などもあるので、気になる方は調べてみましょう。
学校の評判、実際に現場での評価
学校は基本的に生徒がお客のため利益追求に走っているような専門学校も少なからずあります。
評判が良い悪いの判断は難しいですが、良い学校に通えば何かができるようになるわけではないため、どこでも自分で学習しようと思う意思は必要です。
そうは言っても8~9割は何となく入学した方が多い印象ですので、お金と時間を無駄にしないよう考えて選びましょう。
各学校の現場での評価
筆者は主要な専門学校の卒業生は包丁を見ただけでだいたいわかります。
また、決して決めつけるわけではありませんが、各学校によって卒業生の質が似ている傾向にもあるように思えます。
これは筆者の独断と偏見なため、全てが全てそうではありません。
それとこの学校の生徒だから採用しないといったことももちろんありません。
ただ現場の他の料理長や先輩に話を聞くと、この学校の生徒はプライドだけ高いとか、勘違いしている、といった悪いところも多く耳にします。
もちろん、全てが全てそうではありません、大事なのはその人の人間性です。
実際に学校で教わることと、現場で求められる能力はかなり乖離(かけ離れている)しているため、その部分まで考えられる生徒というのは少ないはずです。
身だしなみなどの細かい規定
衛生上、調理師専門学校は身だしなみに厳しいところが多いです。
年頃のファッションはあまり過激にはできません。
男子は髪の長さ、黒髪、ピアス、爪の長さなど
女子は髪の色、化粧、ピアス、爪の長さ等、チェックされます。
実習時に帽子を被るのが嫌というのはどの生徒でも言うことだと思います。
調理師専門学校に通う最大のメリットは就職先の間口を広げるため
学校でしかない求人、ホテル、有名レストランの求人が多くある
調理師専門学校の最大のメリットは就職先の間口、自分で選べる就職先が多くなることだと筆者は思います。
実際に学校にしかない企業の求人もありますし、ホテル等は専門学校経由でないと正社員の採用が厳しかったりします。
この辺りは各学校のホームページに就職実績というのがあるので見てみると学校のレベルも把握できます。
飲食業は決してホワイトな業界ではありませんが、その中でも優良企業は各専門学校に求人を出している確率が高いので求人の質は自分で探すよりは良くなってきます。
調理の技術や知識は通っただけでは身に付きません
調理師専門学校を卒業しても必ず現場で通用するわけではない
よく言われますが、専門学校を卒業したからと言って必ず料理が上手くなるわけでも、現場で通用するわけでもありません。
できる人は学校に通わなくてもできますし、できない人は学校に通ってもできないのです。
これは【考え方】の問題であり、器用、不器用というのは最初は関係ありません。
学校に通っても結局やるのは自分なので、自分で勉強をしたり興味を持ったりしないとできるようにはなりません。
自分で【考える力】があって、それをサポートしてくれるのが専門学校だと思いましょう。
または【考える力】を養う場所と考えましょう。
ただ、何も考えずに通ってしまうのは時間もお金ももったいないです。
最初は安易な考えでも、結局最後にやるのは自分になってきます。
そのあたりは少し考えながら決めていきましょう。
まとめ
- 調理師専門学校は1年制、2年制、夜間(定時制)の3つのコースがある
- 1年目でやることは1年制でも2年制でも夜間でもほとんど変わりはない
- 2年制はそれぞれのコースごとにさらに特化して勉強できる
- 学校によって座学と調理実習時間の割合が違う
- 学費は安くて100万~高くて200万程
- 身だしなみ等は厳しい
- 就職先の選択肢が増えるのが最大のメリット
- 調理師専門学校を卒業しても必ず現場で通用するわけではない
筆者の思うところを詰め込んでみました。
ちなみに筆者は2年制の西洋料理コースを卒業しております。
学生時代はやはり楽しいことが多いので当時も今も通ってよかったと思っています。
思い返すと就職先が広がるというところのメリットが大きく、スタートラインを高く持てるようになるので、より人生の選択肢が広がっていくと感じました。