今回はその【長時間労働】を少しでも改善するためどうすれば良いのかを現役料理長の筆者が実際に現場で行っていることを踏まえて考えます。
今回は店舗中堅社員以上向けの記事かと思いますが、参考にしていただければと思います。
前回の続きになります。
飲食業、長時間労働の原因と解決策
重要な要素は【営業時間】【メニュー構成】【スタッフの能力】3つ
①営業時間
まず最初に構造的な部分の営業時間です。
営業時間を短くすればその分、長時間労働は改善されるはずです。
【はず】というのは状況によってはそうならないこともあるためこの言い回しになります。
そして店舗運営として一番の問題が営業時間を変えたことによって【売上が下がる】可能性があるという事です。
個人店でも会社経営でも売上が下がるということはとても【ネガティブ】なことになります。
最も嫌なパターンは営業時間を短くしたことにより【売上が下がり】さらに【経費が上がってしまった】というパターンです。
現実的に経営者も店舗責任者もネガティブな責任は負いたくないし、問われたくないというのが本音だと思います。
大事なのは、必要な営業時間と売上、経費のバランスになります。
まずはできるところから時間帯別で来客数と売上を分析してみてください。
営業時間を変えることが現状難しい場合は次のメニュー構成を見直してみましょう。
②メニュー構成
メニュー構成はとても重要です。
これによりほとんど全てのオペレーションが決まっていきます。
現状メニュー数が多く、仕込みやオーダーが複雑になり長時間労働になっている場合はメニューの分析をしましょう。
コース料理等は例外になりますが、少なからず1品料理の物は月の出数を集計し、不必要なメニュー、又は仕込みに時間のかかるメニューをピックアップしましょう。
そしてメニューを考える時は、材料(発注)、仕込み時間、冷蔵庫等のストック場所、オペレーションの流れは1品1品考えるようにしましょう。
よくありがちなのは、とりあえずこのメニューは必要だろう、と何となく決めてしまうことです。
実際に現場で働いていないとわからないことですが、材料(発注)、仕込み時間、冷蔵庫等のストック場所、オペレーションの流れを無視したメニュー構成にすると間違いなく仕事がやりにくく、スタッフにもストレスがかかります。
この辺は厨房の設備によっても変わってくると思います。
細かいことの積み重ねですが飲食業で労働時間を短くするためには必要なことだと筆者は思っています。
また、メニューを考える際は必ず月間の販売数の目標を立てた方がよいです。
過去の販売実績からも例えばこのメニューは月間100食出ているとしたら100食作るのに必要な材料、仕込み時間、保管場所はだいたい決められると思います。
自分の【感覚】と【数字】が合わさるように理解していくことで結果的に売上、原価、経費、労働時間などお店全体の数字と労働のバランスを保てるようになっていきます。
ただ数字的な面に寄り添いすぎて本質のメニューに魅力がなければ意味がありませんので、そこは料理人としてしっかりと考えていただければと思います。
何がどこに入っているかよくわからなかったり、よく使う食材を奥の方にしまっていたり
整理整頓ができているだけで仕事の捗り具合は変わりますので今一度確認してみてください。
③スタッフの能力を向上させる
全ての供給能力(生産力)の源は【人】であるためスタッフ育成には特に力を入れましょう。
スタッフの能力を上げることで間接的な労働が如実に短縮されます。(生産性が上がる)
ここを疎かにしてしまうと離職率も高くなり、職場の雰囲気や人間関係が悪くなったり、生産性がさらに悪くなってしまいます。
大事なのはいかにスタッフ1人1人の能力を最大限生かせる環境にもっていくかです。
正直、できる人はどんな環境でもできる確率が高く、自分から進んで勉強し仕事を覚えます。
そういった人と同じことを別のタイプの人間に求めてしまうとダメになってしまうこともあるため、育て方は人によって異なっていきます。
人の育て方は難しいですが、ここに力を入れないとそもそもお店のクオリティーが上がっていきません。
ここに関しては正解はありませんが、とにかく力を入れましょう。
すぐには結果は出ませんが将来的に劇的に変わる要素になります。
筆者が実際に行った長時間労働の解決方法
実際に行動を起こすのは難しいかもしれませんが、改善したいと思う方は参考にしていただければ幸いです。
改善前の月間労働時間 250~300時間
改前後の月間労働時間 200~230時間
※営業時間に関しては変えていません
※売上は右肩上がりになっています。
※レストラン形態です
メニュー構成の見直し
筆者の勤めるレストランはアラカルト(1品料理)がメインで、コース料理は予約のみになっています。
そのため1品料理の毎月の出数を統計し、不必要なメニューを省きコンパクトにしています。
また新メニューを組み立てる際も、仕込みの段取りやオペレーション、ストック場所に至るまでしっかりと組み立てるようにしています。
暇な平日などに仕込み溜めのできるような作業は行い、新鮮さを求められるメニューは当日やる等のメリハリをつけます。
とにかく、仕事のやりやすい環境を作ることで多少の忙しさでも窮屈なく回っていく厨房をつくります。
同じメニューを作るにしても、1時間かかるより30分で終わらせられればそれだけ生産性が上がります。(品質は変わらない前提)
細かい作業の短縮によって結果として労働時間が短縮されました。
スタッフの育成
こちらは1人1人しっかりと目標を意識させることで少しずつですが改善されていきました。
ただ漠然と日々の業務をやっている人もいれば、最初から考えて行動できる人もいます。
後者は何もしなくても伸びていきますが前者は少し手助けが必要です。
決して甘くするわけではなく、愛のある接し方ができれば若い子でもついてきてくれるとは思います。
大切なのは【この人のために頑張ろう】と思わせたり、その人に何か【頑張る理由】を作ってあげることです。
この辺りは人によってさまざまなので人間性といわざるを得ません。。。。
ここを良くするだけで職場の雰囲気も良くなり、皆が生き生きと働けて結果として生産性も上がり労働時間の短縮につながります。
正社員1人あたり1ヵ月30~50時間の短縮になっています。
もちろん売上は下がっておらず、むしろ以前よりも上がりました。
結果的にお店全体のクオリティーも上がり従業員の給与も上げることができました。
所謂サービス残業などもありません。
まとめ
- 労働時間を見直したければまずは営業時間とメニューの見直し!
- スタッフの育成は常に力を入れ、将来の投資にする!(将来的な生産性の向上)
- すぐに効果を出すのは難しいが、長期的な目線で少しずつ変えていく!
そして筆者自身は実は長時間労働は悪だとは思いません。
なぜ長時間労働なのか、なぜ低賃金なのか、なぜそうなってしまうかの本質を理解することが重要だと思います。