飲食業はなぜ労働時間が長いのか?長時間労働の理由を考えてみる

飲食業と聞くと必ず長時間労働と想像されると思いますが、なぜ長時間労働になってしまうのでしょうか。
現役の料理長の筆者が経験上思ったことを解説していきます。

飲食業はなぜ労働時間が長いのか?

なぜ長時間労働になってしまうかというと、一言でいうと多くの飲食業は仕事としては【割に合わない】ということです。
売上、利益と労働の割合が釣り合っていないのです。
もちろん、全てが全てそういったわけではありません、ただしどういった原因でそうなってしまうのかを考えていきます。

飲食業には2種類の労働があると筆者は考えます

  1. 直接的な労働【営業時間、接客、オーダー提供など】
  2. 間接的な労働【仕込み、洗い物、発注、掃除など】

この2種類の労働について紐解いていきたいと思います。

①直接的な労働とは?

名前の通りですが直接的な労働は売上に直接的に関与している労働になります。
基本的には、【接客全般、実際にオーダーを作る、営業時間など】があります。

直接的な労働はお店の構造的な部分が多く、1人1人のスタッフでは操れないことが多いです。

 

②間接的な労働とは?

こちらは売上に直接的に関わってはいないが、間接的に必要な労働になります。
基本的には、【料理の仕込み、洗い物、発注業務、店舗内の清掃など】があります。
お店によっては間接的な労働を多く占める業態もあります。

間接的な労働は1人1人のスタッフ努力でより短くすることが可能です。(スタッフの能力重視)

ただし、仕事をしてるのは【人】なので一定以上より短くすることに限界があります。
例えば玉ねぎ3個を30分でみじん切りにしていた人を能力向上で1分にすることはまず無理でしょう。(機械を使う場合は別)

 

ホールとキッチンで直接労働と間接労働の割合が違う!

ホールとキッチンで直接的な労働と間接的な労働の割合が違います
また今回は比較的大きい店でホールとキッチンが分かれているような店舗を中心とした考え方になります。

キッチンの労働の割合

直接的な労働 約2~3割
間接的な労働 約7~8割

ホールの労働の割合

直接的な労働 約6~8割
間接的な労働 約2~4割

 

キッチン(調理場)の多くは間接的な労働

飲食業で働いたことのある方はわかるかと思いますが、キッチン(調理場)の仕事の多くは仕込みになります。
またそれ以外にも洗い物や厨房内の清掃、食材の納品、発注業務などが多くを占めるでしょう。

実は客から注文された料理を作る時間は全体を通してもさほど多くはありません。
フランス料理店のコース料理にしてもこの比率は例外ではありません。

そのため、キッチンの労働時間は間接的な労働をいかに短くできるか、というところがカギとなります

逆にホールは直接的な労働が多い

ホールは主な業務がお客との接客になります。
店内の清掃や、売上の集計などのバックヤード業務はありますが、それでも多くは接客全般の労働になるでしょう。

そのため、労働時間は営業時間などの売上に直接関与する物に影響されていきます

 

 

飲食業は直接労働と間接労働どちらも多い

 

飲食業はこの直接労働と間接労働のどちらも多いです。
そのため、結果的に長時間労働の原因となってしまっています。
また直接的な労働を減らしても間接的な労働が減るとは限りません、どこでバランスをとるのかは経営者、料理長などが綿密に計画しないと必ず長時間労働になります。

例えばお店の営業時間が11時~23時だとすると12時間の営業時間があります。
これを30日営業する場合12時間×30日で360時間になり、そのお店では最低でも1か月に360時間は【誰か】が働かなくてはならなくなります

この360時間(直接的な労働)をベースにさらに間接的な労働(仕込み、掃除など)がプラスされお店の総労働時間は決まっていきます。

この【誰か】というのはスタッフが1人でも2人でも関係ありません。
そのお店を運営するために働かなくてはならない最低の総労働時間となります。
仮にこのお店を1人で運営する場合は最低でも360時間は働かなければならないという事です。

つまり、営業時間ですでに最低ラインの総労働時間は決まっていきます。

では数字で考えてみましょう。

数字で考えてみる

 

例えば以下のような売上の店舗があったとする。

月売上 500万円
人件費[わかりやすいように30%] 150万円
営業時間11時~23時(12時間営業)
1ヵ月30日営業とする

このお店の最低総労働時間は12時間×30日で360時です。

全ての人件費に150万円使えます。
(実際の150万円は従業員の社会保険料も込みの金額になる)

わかりやすく月給25万円の社員を雇うとするとお店全体で6人雇えることになる(ホール、キッチン合わせて)
仮に1日8時間労働1時間休憩月8日休みを当てはめてみると

8時間(1日の労働時間)×22日(出勤日数)×6人(従業員数)=1056時間(1か月に全員が働ける時間)

1ヵ月に全員が働ける時間が1056時間

1056時間-360時間=696時間

上記の条件の場合、この696時間が間接的な労働に使える【可能性】があります
あくまで【可能性】という事で全てがそうなるわけではありません。
この数字が多いのか少ないのかは売上を見てみましょう。

売上500万の場合、従業員1人の1労働時間当たりの売上は約4700円以上が必要になります。
さらに上記条件をクリアするには働いている間のほとんどが常に2人(キッチンホール合わせて)でお店を回していかなければなりません。(スタッフの休憩や休みがあるため)

仮に1人が洗い物を1時間したとしても4700円の売上は取れませんし、1人が洗い物をしていたらその間はもう1人が全ての業務を回していかなければなりません。
トイレやフロアの掃除をしても同じでしょう。
ただしこれらはお店の運営には必要な業務(間接的な労働)になります。

仮に1時間洗い物をしてしまった場合、どこかで倍の9400円を売らなけれなりません。
溜まりに溜まってしまった場合どうすれば既定の売上がクリアできるのでしょうか。

結果的にこの条件の解決策として【長時間労働】を選んでしまうことが多くなってしまいます。
もちろんこれは数字上の話でもありますが、飲食業はこのような流れがあって割に合わなくなる、長時間労働の原因となる、ということを感じてほしいです。
解決策は複数あります。

また、2人で回せるお店の大きさは限界がありますし、大きさが決まっているということはお客の入れる数も決まってしまいます。
そういった過酷な条件を全てクリアーして達成できる数字がこの売上500万円なのです。

 

まとめ

  • 飲食業には直接的な労働と間接的な労働がある
  • キッチン業務は間接的な仕事が多く、ホールは直接的な仕事が多い
  • お店を運営するために必要な総労働時間を把握する
  • その上で解決策を考える。

改善策は色々なパターンがある

話が込み入ってきて実際よくわからなくなってきましたが、長時間労働の解決策はパターン別でいくつかあります。
よろしければこちらもご覧ください。

 

ICHI
やや複雑な説明になってしまい本質がうまく得られないかもしれません。
数字上と実際の現場では全く違うためこれは一種の【感覚】が必要になります。
そのバランスをいかに保つことができるかが責任者の務めでもあります。